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特別講演・ワークショップ「能、その舞台の聖俗と不思議」

「能、その舞台の聖俗と不思議」と題し、直弼公が愛した「能」をテーマに、国文学者・林望氏が、能楽師・坂真太郎氏による所作実演を交えて講演します。

日時
2015年9月27日(日)14:00〜
場所
彦根城博物館 能舞台
料金
500円
チケットは、ひこね市文化プラザでお求めいただけます

「能、その舞台の聖俗と不思議」概要

  1. 彦根藩は、藩主井伊氏第四代直興(なおおき)の時代から能(喜多流)への傾倒著しく、以後代々の藩主がこれを継承、七代直惟(なおのぶ)も演能を盛んに行い、十代直幸(なおひで)は自ら喜多流の能を舞った。また十一代直中(なおなか)は特に傾倒著しく、現存の能舞台を寛政十二年、1800年に造立。隠居後は槻御殿のほうにも能舞台を造った。またその跡をついだ十三代直弼(なおすけ)も自ら演能、小鼓免許皆伝であったし、井伊家文書のなかに、直弼自筆狂言本『安達女』、また自筆の謡本『筑摩江(つくまえ)』がある。また大蔵流茂山家は井伊家のお抱え狂言師であったので、伝来の『狸腹鼓(たぬきのはらつづみ、通称彦根狸)』は、喜多家伝来の本に直弼が改作したものと茂山家では伝えられている由。また『竹生島』の「女体」という小書(副演出)は、金剛流と喜多流だけにある。このうち、喜多流のは、後シテが天女になり、龍神はツレとなるので、常の演式とは逆の配役だが、これは井伊家の好みで作られたと伝えられる。

  2. その伝統ある舞台を観察し、その構造を分析することから、能舞台というのが単なる西洋的な舞台とはちがって、ここが「神聖な空間」であり、「この世ならぬ空間」であることを確認する。

  3. 江戸時代の城には、たいてい能舞台があった。それは江戸幕府以下、能が武家の式楽であったことによる。 南北朝室町期以来の野外(寺社の境内や河原)における野外の勧進能も依然として行われていたが、それとは別に武家式楽として洗練され、変容した部分が大きい。

  4. 城内の能舞台は、白洲を隔てて、御殿の御簾内から藩主や賓客が見るのが本来。折々「町入り能」「お庭能」といって、町人などが相伴することがあったが、その場合町人は、白洲に下座して拝見する。

  5. 能の主題は五番立てで、
     神・男・女・狂・鬼
    にわかれ、往古はこの五番立で演能、それに先立って「翁」という祝福と禊の特別な曲を演じた。今とは演能の形式がまったく違う。

  6. これらのカテゴリーによって、能は、人間の喜怒哀楽、いわゆるヒューマニティのあらゆる側面を一時間半ほどの間に完結的に表現するので、通時代的普遍性があり、それが時代を越えて生き残った理由でもあり、外国人にも受け入れられた所以でもある。ブリテンは、「隅田川」を見て、インスピレーションを得、オペラ『カーリュー・リバー』を作った、等々。

  7. 今回は、坂真太郎師の共演を得て、たとえば、
    1.能の姿勢と動き
    2.能の面
    3.能の演技のさまざまな型と表現
    などを実見し、能がいかに普遍的で多様で奥行きの深い表現を持っているかを見てもらいたい。
    もし可能なら、彦根城博物館所蔵の能面や、能の小 道具、刀、長刀など見られるとよい。